約 1,100,811 件
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/415.html
前ページ次ページご立派な使い魔 結論から言おう。 ルイズの呼びかけに、確かにそれは答えたのだ。 宇宙の果てのどこかから、神聖…なのかはともかく、(ある意味)美しく、強大で雄雄しく凛々しい使い魔が、彼女の呼びかけに答えた。 爆発の向こうに見えた姿は、一見すると巨大な異形だった。 ぼんやりと見える輪郭に一抹の不安を覚えつつも、ルイズは思わず快哉を叫ぶ。 「ほら、見なさいよ! あんなに大きくて、立派な幻獣……が……」 その叫びは煙が収まるとともに消えていく。 煙が消えて、その先に見えた姿は、ルイズの想像を圧倒していた。 「た……確かに、ご立派だ……」 「ゼロのルイズが……こんな、ご立派な……」 「ゼロのルイズじゃなくてエロのルイズだろ……常識的に考えて……」 周囲で見守る同級生も、呻くばかりである。 何しろその煙の先に見えた姿は、これはどう見ても、 「……これはエロい」 モンモランシーの呟きが象徴するかの如く。 どう見てもチン○です。本当に有難うございました。 「グワッハッハッハ! このワシを召喚するとは、小娘、命が惜しくないと見える! ワシは魔王マーラ! お前達とはモノが違うわな! モノが!」 「……いやぁぁぁぁぁぁぁ!」 ルイズの絶望の叫びが、トリステイン魔法学院を駆け抜けた。 ご立派な使い魔 「ミ、ミミミミミミミスタ・コルベール! やり直しを! しょしょしょ召喚のやり直しを! 断固として要求します! 何がなんでも! 私の命に代えても!」 「なんじゃ、失礼な小娘じゃのう」 マーラの渋く低い声を脇において、ルイズは涙目、いや号泣しながら教師のコルベールに食ってかかった。 しかしコルベールは、必死なその生徒の視線から心底気の毒そうに目をそらし、小声で反応する。 「気持ちは……本当によく理解できます、ミス・ヴァリエール。 出来うるものならば認めてやりたい……私の偽らざる本音ですが…… しかし、本当に残念なことに、この使い魔の儀式は神聖なものです。やり直しは…… まことにお気の毒ですが……出来ません」 「で、ででででも! ミスタ・コルベール、いくらなんでも、コレは! コレは! まだいっそ平民が出てきてくれた方が! 平民とFirst Kissから始まる二人の恋のヒストリーを紡いだ方が遥かにマシです!」 「……本当にお気の毒だとは思います」 いつもならルイズを囃し立てる同級生達も、この時ばかりは静かなものである。 というより、男は皆、マーラの威容に己の根本的なナニかが敗北したと感じ、小さくなっていた。 そして女は、両手で顔を覆っている者が多い。だがよく見ると、その指の間からちらちらとマーラを見ている。 誰もがこのマーラの姿から目を離せないのだ。それほどご立派な姿なのだから。 「ミ、ミミミミスタ・コルベール? そ、そそそそれじゃ、ここここれとコントラクト・サーヴァントを行え、と?」 「…………」 非常に沈痛そうな面持ちで、コルベールはまたしても目をそらした。 「残念ですが……」 「グワッハッハッハ! 遠慮せずともよいわ、小娘! 呼ばれたからには遠慮はいらん、さあ! 一発ヤってもらおうではないか!」 マーラの放つ大音声に、ルイズはとうとう顔を向けてしまう。 涙は止まるどころか勢いを増しているが、これはもう、やるしかないようだ。 「あ、貴方は……つ、使い魔になんてなりたくないでしょ……?」 「構わん、構わん。何しろワシは魔王だからのう、ひと時の戯れで使い魔なんぞになるもよし! なぁに、幾たびかは、メシアやらに使役されたこともあるこの身よ! 小娘の使い魔一つ、容易く勤め上げてみせるわ! グワッハッハッハ!」 なんと豪快で男らしく、雄雄しい姿なのだろうか。 これが、こんな形状でなければ頼もしい使い魔と思えたものを…… ルイズは絶望しながらも、コントラクト・サーヴァントの手順に入る。 (もう……もうおしまいだわ、これならいっそゼロのままでよかった…… ああ、私、こんなモノに……ああああああああ) そして、ルイズは己の使い魔となるべきモノに顔を近づけていき。 むちゅう、と。 まさにFirst Kissから始まる二人の恋のヒストリー。 運命に魔法をかけて、ナニが突然現れた。 嫌に肉感溢れる音を立てて、マーラの……その、マーラの唇に自らのそれを重ねた。 唇があったのかというと意外に思えるが、ちゃんと顔っぽい部分があるマーラである。 (な……生暖かい……) 心底嫌な感触が伝わってくる。 それは実際は一瞬だったのだろうが、ルイズにとっては途方も無い永遠のように思えた。 嫌なことをしている時って本当に時間が流れるのが遅いからね。 「ぶはー! ぶは、はあ、はあ……こ、これでいいんでしょ! 契約!」 「ぬう、なかなか大胆な契約だわな……むう!」 マーラの左の方にあるアレに、奇怪な紋様が浮かび上がった。 これこそ契約のルーンであり、激しい熱とともに受けるものなのだが、マーラは微動だにしない。 「おお、心地よい刺激ではないか。これで名実ともに、小娘よ、ワシはおぬしの使い魔という訳だな! 改めて誓おう、ワシは魔王マーラ! 今後ともよろしく頼むぞ! グワッハッハ!」 しかしそう言われたルイズは、マーラから離れ、近くの木によりすがっていた。 そして下を向いて、 「ごえええええ……」 「うぬ、小娘め……第一話からヒロインが吐きよったわ」 「ミス・ヴァリエール……気持ちは、本当に、本当によくわかります……」 コルベールは涙を流しながらそう呟いていた。 「疲れた……もう、何もかも疲れたわ……寝よう、泥のように眠ろう……」 昼の使い魔の騒動から一転、静かな自室でルイズはベッドに横たわっていた。 こんな恐るべき事態になろうとは、誰が予測しただろうか。 あんな……あんなおぞましい使い魔を召喚してしまうだなんて。 「きっとこれは夢。そうよ夢よ。ゼロって呼ばれるのに耐え切れなかった私の精神が、こんな悪夢を作って私を苛んでいるんだわ。 だから目を覚ませばきっと、まだ使い魔は召喚なんてされてないの。 そして私はみんなから笑われながらサモン・サーヴァントを唱えて、平民を召喚するの。 それから紆余曲折あって、第二期が始まったりするのよ。そうよ目を覚ませばそうなる……はずなのに……」 「現実逃避はいかんぞ、小娘。萎えるからのう」 「どうしてあんたは! 私の部屋の中にいるのよ!?」 ベッドの傍に控えるマーラである。 何しろ大きくご立派なので、部屋に入りきるかも怪しかったが、どうにか収まっていた。 しかし冷静に考えれば、一緒の部屋にいる理由がまるでない。 「他の大型の使い魔は、外に寝泊りしてるでしょ!?」 「小娘。ワシは魔王じゃぞ。あんな低級な獣どもと一緒の場所になぞおれぬわい」 「で、ででで、でも! 使い魔なんだからそんなことは……」 「それだけ上等な使い魔ということだわな。誇るがよいぞ、小娘」 「ほ……誇りたくないわよあんたは……」 梃子でも動かない構えのマーラを見て、ルイズはどうにかするのを諦めた。 物理的に動かそうにも、こんなのを触るのは嫌だ。 「じゃ、じゃあ……せめて静かにしててよ、私、もう寝るから……」 「うむ。ワシは寝る前に屈伸運動でもしようかと思うておったが」 「やめて……卑猥な運動はやめて」 身に着けたものをさくさくと脱いで、ルイズは今度こそベッドに潜り込んだ。 脱いだ下着はまだ手の中にある。これを使い魔に洗わせる、というのも、主従を教え込む手段のはずなのだが…… (嫌。絶対、嫌。あんなのに下着を洗われるだなんて、死んでも嫌) 固く決心していたので、明日使用人を呼んで洗わせようと、そう思っていた。 なのだが。 「おお、小娘。丁度良いわ、明日になったらお主の衣類をワシが洗濯してくれようぞ」 「い、嫌! ……じゃなくて、あ、貴方にはそんなの期待してないから!」 「ほほう、何故じゃ? 使い魔というのは、主の雑事を片付けるものではないのか?」 「そ……それは例外のケースよ。普通は主と五感、精神を共有……あんたとはしたくないし、実際してないけど……」 「確かにの」 「そ、それから、秘薬を集める。これは……出来るの?」 「舐めるなよ、小娘。ワシは偉大なる魔王じゃからのう。知識なぞ無限にあるわ」 「そ、そう。安心ね。それから主の身を命にかえてでも守る……これは……まあ、楽勝そうね……」 「うむ、任せておけい」 つまりは、共感の力以外は使い魔として十分にあるのだ、これが。 こんな姿だが。 確かにマーラは、優秀で、強大で、(ある意味)美しい使い魔だったのだ。 「……そ、それだけ出来るんなら、わざわざ雑用なんて頼む必要ないから。 せ、洗濯なんて、し、しなくてもいいわよ」 「まあそう遠慮するでないわ。普段、夜魔どもに身の世話をさせておると、むしょうに細々としたことがやりたくなるのよ。 こんな機会は滅多にないからのう……ワシの厚意は素直に受けるがよいわな」 「い、嫌だって言ってるでしょ!」 「グワッハッハッハ、照れるでないぞ」 「誰が照れるか!」 結局、ルイズは朝方近くまで悶々として眠れなかった。 むしろマーラが、魔王のくせに堂々と眠りこけているのを見て、ルイズは唖然とし続けていたのだが。 前ページ次ページご立派な使い魔
https://w.atwiki.jp/ali-siritori/pages/17.html
ご存知ライトノベル「ゼロの使い魔」のヒロイン、ルイズの本名。 やまも○が猛烈なる攻めにあった際に起死回生の切り札として発した言葉である。 「る~る」という非常に強力な単語であるが、過半数採決法を乗り越えることが出来るかどうかは面子次第であり、汎用性の低さは否めない。
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/4079.html
前ページ次ページゼロの軌跡 第十一話 絆の在り処 次の日、レンは何事もなかったかのように朝の食卓についていた。 昨日の今日で彼女が平然と食事を平らげる様子を見て、ルイズは恐ろしくも悲しく感じた。 あの、いつものようにシエスタにお茶のおかわりを求める、それすらもきっと執行者『レン』としての顔なのだろう。 昨夜のレンの叫びがルイズの脳裏に甦る。口先でなんと言おうと、間違いなくレンは帰還を望んでいる。エステルの元に。 だというのに、ルイズに出来ることは何一つとしてなかった。 「レンちゃんは今日どうするの?」 「そうね、近くの森を<パテル=マテル>とお散歩しようかと思うわ」 「ルイズ様はどうしますか?」 いつの間にか名前で呼ばれていることにも気にならず、ルイズは生返事を返して席を立った。昨日の酒も抜けきってはいないし、なによりレンと一緒にいられる自信が今はなかった。 部屋に戻って横になっても、騙し絵のように思考が輪をなして休むことも出来なかった。目を閉じても冴え冴えと浮かぶ昨夜の情景。 そのうちに意識を保つことにも疲れ、ルイズは眠りに沈んでいった。 昼食の準備が出来たとシエスタに起こされたのが昼過ぎ。軽くて消化のいいものを作りましたからどうぞ、と乞われ眠い目を擦りながら席に着くとそこにレンの姿は無かった。 「レンちゃんならお弁当を持ってまた出かけていきましたよ。<パテル=マテル>も一緒です」 「…気を使わせたかしら」 「はい、何かおっしゃいましたか?」 なんでもないわ、このスープおいしいわね、とルイズは誤魔化してスプーンを持つ手を動かした。 「それよりさっきからルイズって呼んでるけど…」 「あ、も、申し訳ございません。昨日の宴会の際にそうお呼びしてよいと仰っていただいたもので。やっぱり失礼ですよね」 「そんなことないわ。これからもそう呼んで頂戴、シエスタ」 そんな記憶は丸ごと頭から抜け落ちていたルイズだったが、彼女にそう呼ばれることは嫌ではなく、同年代の親しい友人が出来たようで嬉しささえ感じた。 その答えに破顔するシエスタ。 そして、レンと話せない鬱屈を晴らすかのように、ルイズはシエスタとずっと話し込んだ。 「従姉妹が酒場で働いてるんですよ。ルイズ様も行きませんか?あまり女性向けの店とは言えないんですが」 「そういう所は行ったことがないから楽しみだわ。シエスタの休暇が終わる前に行きましょうか」 「店長さんがすごく変な人なんですよ。悪い方じゃないんですけど…」 「オールド・オスマンってどこらへんが偉大なメイジなのかいまいちわからないわよね」 「よく使い魔の鼠が女性の周りをうろつくので他のメイドのみんなも困ってるんです。ルイズ様、なんとか 出来ませんか」 「あのスケベジジイったら。もうちょっと脅かされた方がよかったのかしらね」 「それでね、そのおじいさんったら幼馴染が作った料理が忘れられないから作ってくれ、なんて言うのよ」 「あはは、オウガ退治の次はレシピ探しですか。貴族修行も大変ですね」 「あちこち走り回る羽目になったわ。そのおかげで色んな人に会えたけど」 話の種も尽きてもルイズはレンの事を話そうとはしなかった。 そのことに薄々気づいていたシエスタだったが、彼女はルイズのためにも、踏み込むことを決めた。 「ルイズ様とレンちゃんはこれからも旅を続けられるのですか?」 「…レンのことは?」 「レンちゃん本人からある程度のことは聞いています。ゼムリア大陸のリベール、おそらくは別世界であるところから来たと」 「レンはなんでもないように振舞っているけど、きっと帰りたがっているわ。昨日その手がかりを見つけたけれど、殆ど得るものもないままに終わってしまった」 「あの石碑のことでしょうか。今朝レンちゃんにも聞かれたのですが、生憎私は何も知りません。ずいぶんと昔からあるものみたいですが」 他の人があれについて話してるのを聞いたこともないですね。とシエスタは語尾をしぼませて申し訳なさそうに言った。 それを聞いてルイズはレンの気持ちを思って顔を伏せた。 そんなルイズを見たシエスタから優しく言葉を掛けられる。 「それでも、レンちゃんを召喚したのがルイズ様で本当に良かったと思っています」 「どういうこと、シエスタ?」 「ルイズ様は気づいていらっしゃらないと思いますけど、他の誰かといるときとルイズ様がいるときとではレンちゃんの様子が違うんですよ。なんというか、落ち着いているような安心できるような、そんな感じです」 目を丸くするルイズ。シエスタは微笑んでそのまま話し続けた。 「あの年頃の少女がどうして人殺しに長けているのか、どうして鉄のゴーレムを連れているのかは私は知りません。また、そうなるまでにどんな苦しみがあったのかも。 元いた世界から切り離されて見知らぬ人の中で一人ぼっち。それはきっととても辛いことです。でも、レンちゃんはルイズ様の存在を救いとして、またそれを必要としている。 ルイズ様がレンちゃんを召喚したのはただの偶然であったのかも知れません。けれど、レンちゃんと出会ってルイズ様は変わられました。貴族として、良い方向へ。 なら、きっとレンちゃんもルイズ様と一緒にいる中で生まれ変われると思うんです。今よりずっと幸せな生活が送れるように。 他人との絆があって、初めて人間は立って歩くことが出来る。人と人が出会うということはきっと、そういうことではないでしょうか」 おじいさんの受け売りなんですけどね。そう言ってシエスタは照れたように舌を出した。 ルイズは何も言わずに立ち上がった。 レンを迎えにいこう。 「もうすぐお夕食の時間ですから、仲良く帰ってきてくださいね」 シエスタに見送られて、ルイズは歩き出した。 向かったのは昨日歩いた村の外れ。やはりそこにレンと<パテル=マテル>の姿はあった。 ルイズが近づくと<パテル=マテル>が反応して蒸気を噴出す。しかし、それに気づいていないはずもないだろうに、レンは石碑の前に座り込んで振り向こうとはしなかった。 ルイズはその様子に一瞬躊躇ったが意を決して声をかけた。 「レン」 「…」 答えはなかった。それでもルイズは語りかけた。 ルイズはこれまでレンに多く助けてもらった。レンの存在があったからこそ自分の望む貴族として生きようと決意できたのだし、他の貴族と決闘になったときもレンの助勢があった。 旅をしている時も数多くの難問にぶつかったがいつだってレンがそばにいてくれた。ある時はその力を、またある時はその知恵を。レンがいなかったら今の自分はない。 ならば今こそ、自分はレンの力になろう。 「また旅を始めましょう。今度はレンが帰るための手がかりを探す為に」 「ルイズ…」 思わず立ち上がって振り向いたレン。驚きか喜びか、その顔は泣いているようにさえ見えた。 「でもまた駄目かもしれないわ」 「なら何度でも探せばいい。タルブ村にあったんですもの。他のところにもあるかもしれないわ。トリステインが駄目ならゲルマニアでもアルビオンでもガリアでも。 それでもないなら東へ向かいましょう。聖地ロバ・アル・カリイエ。エルフなんてレンと<パテル=マテル>なら物の数じゃないわよ」 「でも…」 ここで諦めてはシエスタに向ける顔がない。 ルイズは微笑んで言葉を続けた。ルイズを励ましてくれたシエスタのように。 「ほんの少しの間だったけれど、確かに世界は繋がった。エステルはレンに手を伸ばしてくれた。 レンとエステルの絆は決して切れてなんていない。希望を捨てない限り、レンは誰かと一緒にいられる。 だから、私たちも歩き出しましょう」 二人はお互いの手をとって、シエスタの待つ家へと歩き出した。 翌日、たっぷりと寝坊したルイズとレンが遅めの朝食を摂りに下へようとした時、けたたましい音を断ててシエスタが階段を上ってくる音が聞こえた。 いつもメイド然とした歩き方をするシエスタには似つかわしくないその様子に、二人は何か凶報を感じ取る。顔を真っ青にしたシエスタが話すのを聞いて、その予感が当たったことを知った。 「一体どうしたの、シエスタ」 「アルビオンが、レコン・キスタの軍が攻めて来たんです!」 タルブ村での短い休暇はこうして終わりを告げた。 前ページ次ページゼロの軌跡
https://w.atwiki.jp/dqmonsterdatabase/pages/15.html
ドラゴンクエストの登場モンスター -目次 あ行 か行 さ行 た行 は行 ま行 や行 ら行 あ行 あくまのきし おおさそり か行 がいこつ かげのきし キースドラゴン キメラ キラーリカント ゴースト ゴールドマン ゴーレム さ行 しにがみのきし しのさそり しりょう しりょうのきし スターキメラ ストーンマン スライム スライムベス た行 ダースドラゴン だいまどう てつのさそり ドラキー ドラキーマ ドラゴン ドロル ドロルメイジ は行 ヘルゴースト ま行 まどうし まほうつかい メイジキメラ メイジドラキー メーダ メーダロード メタルスライム メトロゴースト や行 よろいのきし ら行 リカント リカントマムル りゅうおう りゅうおう(変身)
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/5170.html
前ページ次ページ虚無に響く山彦 彼女、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールが初めて"彼"と出会ったのは、春の使い魔召喚の儀式の場である。 度重なる失敗の末ついに成功した『サモン・サーヴァント』によって、彼はルイズの使い魔として召喚されたのだ。 土がえぐれ砂煙が立ち昇る大地に横たわる青年を見るに及んで、 魔法成功の歓喜に浸る間もなくルイズはしばし呆然とし、そして落胆に沈んだ。 己の呼び出したものはドラゴンやグリフォンなどの幻獣でもなく、ワシやネコなどの獣ですらない、人間それも姿からして平民である。 雑用係としてなら役にも立つであろうが、使い魔としての用をなすであろうか。 いや、魔法も学もない平民がやり遂げられるはずがないだろう。 心中に沸き上がる困惑と周囲から叩き付けられる野次に身を震わせつつルイズが近寄ると、彼は目を覚ました。 半身を起こした使い魔の青年は、若々しい薔薇色の頬に貴族の公子のような平民とは思えぬ優雅さを漂わせていた。 ただ眼ばかり寒夜の星を思わせる冷たさがあり、その視線にルイズは息を呑んだ。 しかしそこは生まれついての一流貴族であるルイズ、気圧されることなく『契約』を交わした。 次の瞬間、左手に焼け付くような激痛を感じてルイズは苦悶の叫びを上げた。傍らを見やれば使い魔の青年も同じく左手を押さえている。 これこそ彼が持つ、極限までの練磨と不乱の一念が極まるところに生じる破天の業の一端であるのだが、 当時のルイズは感覚の共有であろうとあたりをつけ、熟慮することは無かった。 前例なき平民の使い魔の出現や、謎のルーンと召喚者にも及ぶ痛みなどの異様を呈したが なんとか使い魔召喚の儀式は幕を閉じ、ルイズ自身も落第の憂き目を免れた。 彼は使い魔として──まあ、内容は雑用が主だが──よく働いた。 召喚の儀式の帰途にエド、ナガサキ、キリシタンなどの意味不明の言葉を彼が投げかけて来た時は困惑したが、 魔法学院のことやハルケギニアのことをルイズが話すうちに黙りこんでしまった。 そしてルイズが彼をここに呼び出したことや使い魔のことを告げると、 しばしの思案の後に彼女を主人として仰ぐことを彼は誓い、そして彼は自身の名をルイズに告げたのだ。 「わたしの名は天草扇千代と申しまする」 それからはルイズの身の回りの世話も、失敗魔法の後始末も、床で寝ることもセンチヨは諾々と従った。 「平民の使い魔も悪くないじゃない」 ルイズは彼という存在にそれなりに満足していた。 召喚した日は動揺のあまり気付かなかったが、彼の凛冽とした美貌もルイズの優越感を後押しした。 ルイズにとって悠々とした日々が続く中、その事件は起きた。 センチヨがギーシュと決闘をすることになったのだ。 理由はギーシュが落とした香水の壜を彼が拾って渡したところ、 そこからギーシュの二股がばれたとかいうお粗末なことおびただしいものだった。 ルイズが騒ぎを聞きつけた頃には、既にセンチヨとギーシュはヴェストリの広場で対峙していた。 ルイズは止めようとした。彼と過ごした時間は両手指の内に足りる日数であったが、 彼の存在は学院に心許せる者が殆どいないルイズにとってかけがえのない存在になっていたのだ。 哄笑を上げつつギーシュが杖を振るってワルキューレを造り出し、センチヨに向けて突貫させようとした。 センチヨはというと、遊山に興じるかのようにそれを眺めるだけ。 次の刹那、ギーシュのニヤけた表情がひきつれ薔薇の造花を取り落とした。 決闘の場だというのにいきなり腕を押さえて屈んだのだ。無論両者の間にいかなる物体の交流もない。 同時にセンチヨは怪鳥のように跳躍して一息に間合いを詰め、佩いていた細見の曲刀をギーシュの首筋に突きつけていた。 「ま、参った」 静まり返った広場にギーシュの降参の声だけが、細く長く降り落ちた。 センチヨは尋常ならざる能力を持っている。ルイズはそれを初めて目の当たりにしたのだ。 ルイズは彼を問い詰めた。それは如何な力なのか、何故秘密にしていたのかを。 だがその時の彼は黙して語らなかった。ルイズは彼との間に決定的な、分かり合えぬ冥漠とした隔たりを感じた。 その後、彼に決闘を挑む貴族が何人かいたが、何れもギーシュのように杖を取り落として敗れ去った。 ルイズはギーシュを含めてそれらの貴族達に敗北時の様子を聞いた。 そして皆一様にこう答えるのだ、『体に刃物を突き立てられるような激痛を感じた』と。 ある時、学院内に土ゴーレムと共にフーケが現れた。 己の使い魔に遅れを取ることをよしとせず、毎夜の特訓に打ち込んでいたルイズはちょうどゴーレムが塔を拳で打つ場面に行き会った。 迷うことなくルイズは失敗魔法で攻撃した。 騒ぎを聞きつけたキュルケとタバサが援護に現れるも、自在に変幻する土の前にトライアングルメイジである彼女達も責めあぐねる。 そして土ゴーレムが地に立つルイズに拳を振り下ろそうとした時、 何処よりか風を巻いて馳せ寄ったセンチヨが彼女を抱え、死地から救い出した。 賊を前にして逃走する形になったルイズは彼の腕の中で抵抗した。その姿に笑みを浮かべたセンチヨは彼女にこう言った。 「ルイズ殿、今より我が忍法の一端をあなたにお見せ仕る」 彼は己の喉笛に手をかけた。傍目から見ても、そこに万力の如き力が込められているのがよくわかった。 同時に土ゴーレムの上に立つ人影が喉を押さえて悶えた。 人影は不可視の炎に炙られるかのように身を震わせ、集中が切れた為に瓦解し土の瀑布と化したゴーレムと共に大地に墜落していく。 後に残った砂山の上には失神したミス・ロングビルが横たわっていた。彼女こそがトリステイン中に悪名轟かす土くれのフーケであった。 直後にルイズは扇千代より初めて“忍法”という言葉を説明された。 ついでに言うと、この頃からセンチヨは常にルイズの傍らにいるようになった。 手紙回収の任を負ってアルビオンに赴いた時。 ルイズに追従した立場であったにも関わらずセンチヨは率先して働いた。 元々の忍術・体術にガンダールヴの力が相乗したセンチヨは闇中に入れば影の如く潜み、 灯下に身を躍らせれば剣光を散らして敵対者を斬り倒す。賊や女神の杵亭に押し入った傭兵はまるでセンチヨの敵ではなかった。 再び現れたフーケや謎の仮面の男もセンチヨの"忍法"の前に杖を落として敗れた。 そしてニューカッスルの礼拝堂、本性を顕しルイズを殺そうとしたワルドの前にセンチヨが立ちふさがった。 ワルドに強かに痛めつけられたルイズは、薄れゆく意識の中でそれを見届けた。 入り乱れて乱舞するワルドとその偏在。対するセンチヨは、慌てることなく己の両瞼の上に刀身を滑らせる。 次の瞬間、五人のワルド達はうめきつつ両目を掌で覆った。 死線に切りこんだ間隙をセンチヨは瞑目したままでありながら逃さない。 長刀とデルフによる剣撃の前に偏在は風に消え、本体のワルドも左腕を落とされ遁走した。 気絶したルイズが気付いた時、眼下に炎と黒煙に彩られながら落ちゆくニューカッスル城が見えた。 それを背に雲海に飛び立つ風竜の上で、センチヨはルイズに全てを打ち明けた。 自分のこと、自分のかつていた世界、そこで繰り広げられた三つ巴の壮絶な死闘。 彼の腕の中で聞くそれらの話は到底信じられぬことであったが、ルイズは信じた。 蒼穹に走る風が髪を揺する中、ルイズは眠り込んで夢を見た。 煙霧にぼやける水平線が遠く見える大海に小船がたゆたう。紺碧の天球には寒々とした星が瞬いている。船に座るのは幼い頃のルイズ。 中空から風のように現れる子爵様はもういないという実感と、寂寥と孤独の冷気に少女は身を震わせて泣いた。 そこへ模糊たる海面を渡って誰かが近づいて来る。藍色の大気を裂いて船に跨ぎ入った青年は溜息して、微笑を浮かべた。 「探しましたぞ、ルイズ殿」 ルイズの心にはセンチヨが住み始めていた。 この頃から既にルイズの胸に、センチヨへの、使い魔に対する以上の淡く熱い想いが蕾を結み始めていたのかもしれない。 それからのセンチヨはずっとルイズの前に居た。 アルビオン軍がタルブの村に攻め寄せた時も、蘇ったウェールズとアンリエッタが杖をルイズ達に向けた時も、 アルビオンに上陸する時も。センチヨは打ち寄せる害悪を巌のように受け止め、その全てをルイズから遠ざける。 信頼に裏打ちされたセンチヨの行為にルイズも答え、己の果たすべき役目、虚無の詠唱を紡ぎあげ艱難を打破する。 それはまるで、二人の間に思念の山彦が響きあうようであった。 ロサイスに向けて七万の軍勢が歩を進める。 ルイズは殿軍としてそれを食い止めるよう命令された。撤退、降伏を認めぬ死守命令であり、生還は不可能。 恐怖に歯の根が合わず、臓腑が体内で捻れているような嘔吐感が沸き上がる。 だが、真の恐怖を生み出す根源は自分に付き従うであろうセンチヨの存在だった。 彼の死。想像するだけで心臓の鼓動が早鐘の如く満身にどよもし、筋骨がまるごと氷柱と化したかのような怖気が走る。 ルイズは人気の無い寺院の前にセンチヨを呼び出した。 「センチヨ、逃げて。わたしにつきあうことはないわ。あなたはもう道具として使われる忍者じゃない。 二度も死ぬなんてことしなくていい、いや、しちゃ駄目なの。だからお願い、どこか遠くに逃げて・・・」 それだけをセンチヨに言うとルイズは逃げるように踵を返した。 本来なら相手の返事を聞いてから移るべき行動だが、その言葉が肯定、否定のいずれにしても、 それを受け止めるのはルイズには辛すぎた。 ルイズは駆け出そうとしてセンチヨに肩を捕まれた。 声を出す間もなく、振り向かされたルイズの顔にセンチヨの顔が重る。 真に重なったのは唇同士、およそ春の儀式の際に交わした『契約』とは比べられぬ程に甘やかで深く熱く、そして物悲しい交わりであった。 唇が離れると共に彼に何か言おうとしたルイズは、強烈な眠気に襲われそのまま夢寐に意識を沈めた。 意識を失う前までの彼との思い出が車輪の如く脳裡を走り抜け、音も無く止まる。 「・・・・・・センチヨ!」 魂を掻き毟るようなルイズの絶叫がアルビオンの空を翔る。 涙が絡んだ上に、何度目の絶叫になるか喉が枯れているようで、彼女の愛らしい声は砂利が混じったような響きをまじえている。 ルイズが目を覚ました場所は寺院の前ではなく、出航するレドウタブール号の甲板であった。 兵士の言によれば、センチヨはただ一人で七万の軍勢が大挙する丘に向かったのだ。 話を聞くやルイズは狂気の如く柵に駆け寄り、飛び降りようとした。 同乗していたギーシュとマリコルヌが止めなければ、五体は大地に叩きつけられていただろう。 「無理だよ!下にもう、味方はいないんだ!」 「センチヨが行ってからもう丸一日経ってるんだ!君が戻ってなんとかなる状況じゃない!」 「おろして、お願い!二度も死ぬなんてあんまりだわ!センチヨ!」 絶叫は山彦響かぬアルビオンの空に無惨にも消えた。 前ページ次ページ虚無に響く山彦
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/1076.html
前ページ / 表紙へ戻る / 次ページ 二八五 君はルイズの小さく華奢な手を握ると、そのまま一息に引き上げるが、勢いをつけすぎたため二人そろって落馬しそうになる! 運だめしをせよ。 吉とでたら一四四へ。 凶とでたら一五へ。 一四四 なんとか体勢を立て直した君は、ルイズを前に跨らせると、獣から逃げるべく馬に拍車をあてる。 怯える馬はすぐさま全力の襲歩(ギャロップ)に移り、唸る獣ともがき苦しむ馬の姿は、はるか背後へと消える。 城下町の壁が見えてきたところで、ようやく安心した君は馬の歩調を緩めるが、ルイズの肩は小さく震えている。 「あの獣が襲ってくるところ……ぜんぜん見えなかった。気がついたら馬が倒れて、振り落とされて……」 ぶつぶつとつぶやくルイズに君は、怪我はなかったかと尋ねる。 「う、うん。わたしは大丈夫。でも、あの子が……あの子、死んじゃったの?」 あの子というのは、学院の厩舎から借りた馬の一頭のことのようだ。 今頃は、獣にとどめを刺され、喰われてしまっているだろう。 「あれ、いったい何だと思う?この辺は人が多いから狼どころか猪さえ出ないのに、あんな見たこともない猛獣が出るなんて」 君は、いくらか元気を取り戻した彼女の問いに答えず馬を進めるが、あの獣の正体は知っている。 スナタ猫。 カーカバードのスナタの森に棲息する恐るべき猛獣であり、目を閉じて精神を集中させるだけで自在に姿を消してしまえるという、魔法じみた能力をもつ。 君が闘って勝てぬ相手ではないが、ルイズを護りぬくことは難しかっただろう。 逃走は賢明な判断だ。 あのスナタ猫も誰かに召喚されたのち、逃げ出したのだろうか? やがて君たちは城下町の門に到着すると馬を預け、街道に謎めいた猛獣が出没したことを執行官に通報する。 学院と街を結ぶ街道はきわめて安全であり、ここ数ヶ月は追い剥ぎひとり現れていない、と半信半疑の執行官にルイズは、 「学院の馬が一頭、死んじゃったわ。早く行って丁重に葬ってあげて!あと、今日じゅうにあの怪物を退治しなさい!」とまくしたてる。 弓と矢を背負った数人の騎馬兵が街を出て行くのを見送ると、ルイズは本来の目的である買い物をはじめると言う。二一七へ。 二一七 ルイズに導かれて歩きつつ、周囲を見回す。 トリステイン魔法学院は、君のもと居た世界の常識からかけ離れた驚異の場所だったが、この城下町は君の故郷のそれと大差ない。 行き交う人々、声を張り上げる露天商、荷物を満載した荷車など、どこの町でも見られる馴染み深い光景が広がる。 それでも異国の町並みとは興味深いものだが、君が注意しているのは建物や商店ではなく、やはりどこの町でも見られる存在 ――ごろつきどもだ。 この街の治安は悪くはなさそうだが、余所者と貴族の少女という取り合わせは、すりや強盗にとって格好の獲物だろう。 君の心配も知らず、ルイズはどんどん先に進んでいく。 どこへ行くのかと君が問うと、 「まずはそのボロ服を買い替えなきゃね。学院の中じゃ、犬だってもっと綺麗にしてるわよ」と言う。 長旅で擦り切れ、色落ちしているとはいえ、シャムタンティ丘陵のある村では身なりのよさで注目を浴びたことさえあるのだが。 君は、古着屋で丈夫で地味な衣装を買ってもらうか(二○二へ)? それとも、貴族の従者にふさわしい仕着せを一式、そろえてもらうか(一五五へ)? 二○二 君が、服を買うなら古着屋でそろえたいと言うと、ルイズは 「ずいぶん遠慮するわね。まあ、あんたには執事や従僕の格好は似合わないか」と笑う。 いくつかの角を曲がって古着屋に着いた君たちは、そこで少々擦り切れたマントや丈夫な毛織物のシャツ、馬革の長靴などを買いそろえる。 ルイズは気前よく全額を払ってくれるが、店を出たあとで 「あっ」と小さく声を出す。 「あの子のこと……学院に弁償しなきゃ……」 猛獣の襲撃という事故だったとはいえ、学院から借りた馬を一頭、死なせてしまったのだ。 ルイズが弁償するのは当然のなりゆきだろう。 いかに彼女が大貴族の令嬢とはいえ、乗用馬を気楽に買えるような小遣いを貰っているわけではないようだ。 恩を売り、貴族の威厳を見せつけるために君を買い物に連れてきたルイズだが、その懐の余裕は完全に失われてしまった。 「まだ服しか……もっと剣とか……だいたい、あのけだものが、いえ、野放しにしている役人が悪いのよ……」 ルイズは顔を赤くし、怒ると同時に恥ずかしがっている。 この状態をどう取り繕おうか、悩んでいるようだ。 君は、服が買えただけで充分だと言い、街を出ることにするか(二八へ)? せっかく街に来たのだから、自腹を切ってでも買い物を続けるか(二六六へ)? 二六六 君にいくらか金貨の手持ちがあることを知ると、ルイズの表情は明るくなり、 「使い魔のものはご主人様のもの。つまりあんたのお金は、わたしのお金よね。さあ、そのお金で好きなだけお買い物なさい!」と 、 無茶苦茶なことを言い出す。 君は溜息をつき、馬の弁償代として全額を奪われる前に、いっそここで使い切ってしまおうかとも考える。 君が財布を取り出して金貨を数えていると、ルイズが興味深げに覗き込む。 「変わった金貨ね。『エキュー金貨』でも『新金貨』でもない。それにしても、縁はよれよれ、表面は傷だらけじゃない。ちゃんと使えるの?」 君はどこの世界だろうと黄金の輝きの価値はかわらぬだろうと答え、彼女に道案内を頼む。 どの店へ行く? 秘薬店『≪水牛のスーシェ≫の店』・六二へ 武器と防具の店『サンソン&ギヨタン商会』・一九二へ 酒場『躍る子羊亭』・九六へ 前ページ / 表紙へ戻る / 次ページ
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/4321.html
前ページ次ページ虚無と狼の牙 「虚無と狼の牙」1-1 彼は満足していた。守りたかったものは無事守りぬけた。 取り戻したかったもの――救いたかった人物は無事救い出せた。 志半ばで倒れることが無念でなかったかと言えば、それは嘘になる。 しかし、それでも彼は満足していた。自分が命がけで未来を託した人々に。 二度と帰る事は出来ないと思っていた故郷。そこに彼は帰ってこれた。 その幸福と歓喜に包まれて、そして無二の親友の傍で旅立てる自分は ――おかしいかもしれないが、そのとき世界で一番幸せな人間なのだと心の底から思っていた。 一つの世界で狼は眠りについた。その牙を墓碑として。そして、もう一つの世界で狼は再び目覚める。 * ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは呆然と立ち尽くしていた。 彼女の目の前には、爆風が巻き上げた砂埃の中がもうもうと立ち込めている。 そして、その砂埃が収まるにつれそこにあるものの姿が少しずつ白日の下に晒されようとしていた。 「な、なによ、これ……?」 ルイズの起こした爆風にむせ返っていた周りの少年少女たちも、ルイズの視線の先にあるものに目を向ける。 そこにあったのは短い棒と長い棒を直角に組み合わせたようなデザインの物体。見たこともない形の物体に彼女は戸惑う。 「何かのお墓? 記念碑?」 目の前の物体はその長い方の棒を深々と地面に突き立てて、そこに立っていた。 その頃になると、最初は目の前で起こったことに戸惑っていたほかの少年少女たちも冷静さを取り戻し、ルイズに対して野次を飛ばし始めた。 「ルイズ、『サモン・サーヴァント』でこんなオブジェを呼び出してどうするの?」 「さすがはゼロのルイズだ。まさか、生物ですらないものが出てくるなんて驚きだよ!」 「ち、違うわよ。ちょっと、そう、ほんのちょっと失敗しただけよ!」 ルイズは両手を硬く握り締め真っ赤な顔になって、周りの少年少女に言い返す。 「ミスタ・コルベール、もう一回、もう一回召喚させて下さい!」 「え、あぁ、うん。しかし、不思議だなぁ。サモン・サーヴァントで生物でないものが呼ばれるなんて前例、聞いた事がないぞ」 コルベールと呼ばれた男はあごに手を当てて考え込む。 「で、でも、こんなのとどうやって使い魔の契約を結べって言うんですか!?」 「……確かにそれもそうですね。納得できない部分も多いですが、これでは致し方ありません。もう一度だけですよ、ミス・ヴァリエール」 コルベールはなおも納得できないように首を左右にかしげながらも、もう一度の召喚魔法の許可を出した。 ルイズは再び例の物体と向き合うような形になり、呪文を詠唱すべく精神を集中し始めた。 「今度こそ……」 ルイズは大きく深呼吸して、胸の前で杖を構えた。そのときである。目の前の物体が少しだけ動いた。 「え?」 ルイズは目を見開いて、目の前の物体の動きを観察する。それは右に左にゆっくりとした速度で揺れていた。 そして、ルイズは気が付いた。これはこの物体が動いているんじゃない、この物体の刺さっている地面が動いているということに。 そして、彼女が地面に視線を移したとき、ゆっくりと根元の土が盛り上がって―― 「きゃぁー!」 思わずルイズは大声で悲鳴を上げていた。彼女が思わずしりもちをついた、その前には人の腕が地面から生えていた。 ルイズの悲鳴に呼応するように周りの少年少女たちからも悲鳴が上がる。突然地面から人の手が生えてきた。 地面から人の腕が生えている、異様な光景である。それを傍で見ていたコルベールも呆然と立ち尽くすしかなかった。 その腕は黒い服を着ていて、その大きさと形からおそらく若い男のものだということがわかる。しかし、腕が生えてきただけでは事は終わらなかった。 その腕はなおももがくように動き、地面を引っつかむように手をかけた。そして次の瞬間 「ぷはー! なんやっちゅうねん、死ぬかとおもたで!」 土くれをあたりに撒き散らしながら、若い男が顔を出した。その男はしばらく大きく息を吸ったり吐いたりした後、目の前で腰を抜かしているルイズを見つけて声を掛けた。 「ちょっと、そこのおじょうちゃん。悪いけどワイをちょっと引っ張り出してくれへんか?」 彼は彼なりにこの不審極まりない状況にて、これ以上不審感を抱かれないよう爽やかに笑ってみせていたつもりだったが、そんなことはルイズには関係なかった。 ルイズはしばらく固まっていたが、やがて唇をわなわなと震わせると、沈黙を破るように大声で叫んだ。 「な、なんでなのよぉー!」 * 土の中から現れた男は冷静に服に付いた土を払っている。 男は見た目は二十代後半くらいの若い男で、黒いスーツと開襟シャツ、そして茶色の革靴を履いていた。 ちなみにどれもこの世界ではなじみのないものである。 髪の色は黒く、身長はコルベールより頭一つ分高い。 ルイズの周りにいた少年少女たちは食い入るようにその姿を見つめている。 そんな視線もお構いなしに男は服の土を払い終えると、懐からサングラスを取り出しそれを掛けた。 そして、くるりと隣を振り向くと、人懐っこい声を出した。 「いやー、おっちゃん引っ張り出してくれておおきにな。ほんま往生したで」 軽く右手を出して、彼はコルベールに礼を言った。 「まぁ、あのまま埋まっておられても、こちらとしても困りますから」 コルベールは「困ったなぁ」と小さく呟きながら頬を掻いた。 結局、ルイズは腰を抜かしたままで、男を引っ張り出したのは傍にいたコルベールだったのだ。 男はそれから辺りをゆっくりと不思議そうに見回した。そうすると、どうやら自分の周りには子供しかいないことに気が付いた。 「なぁ、おっちゃん。ここ孤児院か?」 「んなわけないでしょ! あんた一体どういう目してんのよ! 学校よ、ここは学校!」 孤児院という彼の言葉に、さっきまで呆然としていたルイズが反応した。 「へー、ここが学校か。はじめて見たわ。割合この辺りは裕福みたいやな。みんなそれなりにちゃんとした格好しとるし、それに」 男は一人の太った少年に目をやった。 「栄養状態も悪うはなさそうやしな」 そして、軽く笑った。 「ふざけないでよ!」 男の態度にルイズがムキになって叫ぶように答えた。 「なんや、そうカリカリすんなや、冷たい嬢ちゃん」 男はそう言って噛みつかんばかりのルイズを軽く流した。 彼の人生経験上、子供たちが集団で生活している場所といえば孤児院しか思いつかなかったのである。 ちなみに、彼は頼んだのに引っ張り出してくれなかったことをちょっと恨んでいる。 「この格好を見たらわかるでしょ」 「すまん、わからへん」 悪びれずに答える男の前で、ルイズは杖を両手で折らんばかりに握り締め歯軋りをしている。 「なぁ、あれって平民、だよな」 「そうよね、貴族はあんな格好しないよね」 そうこうしているうちに彼らの周りにいる少年少女たちはひそひそ話を始めた。 「ルイズー、いくら魔法が出来ないからってそこらへんの平民を連れてくるなよー」 その中の少年がそう野次を入れると、どっと笑い声が湧いた。 「ち、違うのよ。こ、これはきっと何かの間違い! だって、わ、私の使い魔が、こ、こんな」 震える手でルイズは男を指差す。しかし、男はそんなものどこ吹く風だ。 「しかし、これが死後の世界いうやつか。なんか、想像していたんとえらい違うというか。なんか、周りはガキばっかりやし、拍子抜けするわ」 それから、誰にも聞こえないような小さな声で「てっきり外道は地獄に落ちるもんやとおもてたけどな」と自嘲気味に笑いながら、ひとりごちた。 「ミスタ・コルベール!」 ルイズが怒鳴った。何かを考え込んでいたコルベールはその声にゆっくりと顔を上げた。 「なんだね。ミス・ヴァリエール」 「あの! もう一回召喚させてください!」 召喚? なんやそれ、と男は心の中で呟いた。 「それはダメだ。ミス・ヴァリエール」 「どうしてですか!」 「決まりだよ。二年生に進級する際、君たちは『使い魔』を召喚する。今、やっているとおりだ」 使い魔? そう言えばそんなことをこのおじょうちゃんはさっきから言うとるな。 「それによって現れた『使い魔』で、今後の属性を固定し、それにより専門課程へと進むんだ。 一度呼び出した『使い魔』は変更することはできない。 何故なら春の使い魔召喚は神聖な儀式だからだ。 奸むと好まざるにかかわらず、彼を使い魔にするしかない」 「でも! 平民を使い魔にするなんて聞いたことがありません! しかもこんな奴!」 こんなやつ呼ばわりかい、とボソッと呟きながら男はそのやり取りを他人事のように眺めていた。 「これは伝統なんだ。ミス・ヴァリエール。例外は認められない。彼は……」 コルベールは、男を指差した。 「ただの平民かもしれないが、呼び出された以上、君の『使い魔』にならなければならない。 古今東西、人を使い魔にした例はないが、春の使い魔召喚の儀式のルールはあらゆるルールに優先する。 彼には君の使い魔になってもらわなくてはな」 「そんな……」 ルイズはがっくりと肩を落とした。 「さて、では、儀式を続けなさい」 「えー、こ、こんな土の中から出てくるような男と」 「そうだ。早く。次の授業が始まってしまうじゃないか。 君は召喚にどれだけ時間をかけたと思ってるんだね? 何回も何回も失敗して、やっと呼び出せたんだ。いいから早く契約したまえ」 そうだそうだ、と野次が飛ぶ。 ルイズは男の顔を、困ったように見つめた。 こうして見つめると、彼の背が高いことがよくわかる。 おそらく頭二つ分は背が高いだろう。ルイズはこんな大きな男性を見るのは初めてだった。 「ねえ」 ルイズは、男に声をかけた。 「なんや、じょうちゃん」 「あんた、感謝しなさいよね。貴族にこんなことされるなんて、普通は一生ないんだから。だから、ちょっと顔をこっちに向けなさい」 なにをするつもりやねん、と心の中で思いながらも男はとりあえず素直に彼女の目線の高さに顔を向けた。 ルイズは、諦めたように目をつむる。 手に持った、小さな杖を男の目の前で振った。 「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・プラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ」 朗々と、呪文らしき言葉を唱え始めた。すっと、杖を男の額に置いた。男は怪訝そうに眉をひそめた。そして、ルイズはゆっくりと唇を近づけてくる。 「ちょ、ちょっと待ちい――」 「いいからじっとしてなさい」 怒ったような声で、ルイズが言った。 ルイズの顔が近づく。 「いや、いきなりそういうのはやなぁ……」 男は少し抵抗しようと思ったが、すぐに死後の世界ってこんなもんなんかな、と思い直す。 そして、されるがままにルイズの唇が、男の唇に重ねられる。 あの世っていうのはサービスがええんやな。 けど、ワイ別にこういう子供が趣味とかそういうことはないんやけど。そんなことを男は思っていた。 「終わりました」 ルイズ顔を真っ赤にしている。照れているらしい。いや、もしかしたら屈辱に対する怒りかも知れへんな。 「まぁ、そのなんや。仕事ご苦労さん」 そう言って、男はルイズの肩をねぎらうように叩いた。その手をルイズは乱暴に払いのける。 「『サモン・サーヴァント』は何回も失敗したが、『コントラクト・サーヴァント』はきちんとできたね」 コルベールが、嬉しそうに言った。 「相手がただの平民だから、『契約』できたんだよ」 「そいつが高位の幻獣だったら、『契約』なんかできないって」 何人かの生徒が、笑いながら言った。ルイズが睨みつける。 「バカにしないで! わたしだってたまにはうまくいくわよ!」 「ほんとにたまによね。ゼロのルイズ」 見事な巻き髪とそばかすを持った女の子が、ルイズをあざ笑った。 「ミスタ・コルベール! 『洪水』のモンモランシーがわたしを侮辱しました!」 「誰が『洪水』ですって! わたしは『香水』のモンモランシーよ!」 「あんた小さい頃、洪水みたいなおねしょしてたって話じゃない。『洪水』の方がお似合いよ!」 「よくも言ってくれたわね! ゼロのルイズ! ゼロのくせになによ!」 「こらこら。貴族はお互いを尊重しあうものだ」 そんな喧騒を男は「ガキはどこの世界でもガキやな」と思いながら眺めていた。 そのとき、男は自分の体の異変に気が付いた。体が熱い。 なんや、これは。『薬』、か? いや、違う。その感じやない。まさか、さっきので? 「おい、おんどれ、ワイの体に何をした?」 男は身をかがめて、上目遣いにルイズをにらみつけた。 今での飄々とした男からは考えられない、その殺気に満ちた目にルイズは思わずたじろぐ。 この男は一体何なんだろうか? ただの普通の平民とは違うこの、狼のような殺気は? 目の前の男の殺気に彼女はおびえた。 「それはキミの体に使い魔のルーンが刻まれているんだ」 動けないままでいるルイズの代わりにコルベールが冷静な声で答えた。 「……さっきから、召喚やら使い魔やらわけのわからんことばかり。悪いけど、説明してもらうで」 「えぇ。あなたにはその権利がありますから」 コルベールは冷静に男にわかりやすく、召喚と使い魔について説明した。 「ちゅうと、なにか? ワイはこのちっこいおじょうちゃんの使い魔いうのになるために呼び出されたっちゅうことか?」 「そうなりますね。そして、あなたの左手に刻まれたルーン、それが使い魔の証なのです」 「ふーん」 一瞬はまるで狼のような殺気を放った男も、コルベールの話を聞いているうちにさっきまでの人懐っこい表情に戻り、左手のルーンを目線より高く持ち上げて眺めている。 「まぁ、しゃあない。そうやって現世での罪を贖えという神さんの思し召しかもしれへんしな」 男はそう一人で呟いて、一人で納得したように頷いた。 「よし」 そして、男はルイズのほうを向き直ると、右手を彼女に向かって差し出した。 「ほな、じょうちゃん。ワイの名前はウルフウッドや。これからよろしゅうな」 ルイズはしばらく納得できないように口を尖らせていたが、やがてあきらめたように 「ルイズ。ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール」 とだけ言った。そして、おずおずと右手を差し出した。 「ほな、ワイが使い魔ということで一つよろしゅうな」 ウルフウッドは人懐っこい笑みを浮かべたまま、握手したルイズの手をぶんぶんと振った。 * 誰もいなくなった校庭をウルフウッドとルイズは歩いていた。 「しかし、人が飛ぶとはほんまおどろいたで」 「あ、そ」 「なぁ?」 「なによ?」 ルイズは言外に殺気を込めて返事をした。 てっきり、「なんであんたは空飛べへんの?」とでも言われると思ったからである。 実は彼らは使い魔召喚が終わったあと、飛んで授業に向かう他の生徒たちに置いていかれたのだった。 「あんたら、ってひょっとしてプラントか?」 「はぁ?」 予想外の質問にルイズは素頓狂な声を上げた。 「いや、なんか空飛んだりしてるし、もしかしたらそうかなーっておもたんやけど」 「違うわよ! そもそもプラントって何よ!」 「そうか、ならまぁええわ」 なら質問してこないでよ、とルイズは思ったが、この男相手に下手に話を蒸し返しても流されてこっちがむかつくだけだということを学習したので、ここはおとなしく引き下がっておく。 「ねえ、あんたのその担いでいるものって何?」 「これか? 十字架や。知らへんのか?」 「知らないわよ、そんなの。なに、あんたの生まれ故郷の特産品かなんか?」 「まぁ、そんなところやな」 この世界が自分の元いた世界と違うということを認識しているウルフウッドは、ルイズが十字架を知らないという事実にはそれほど驚かなかった。 「あんた、一体何者なの?」 「牧師」 「牧師?」 ルイズは不思議そうに彼を眺める。 「牧師って、神官みたいなものよね?」 「そやな。ちなみにこの十字架はワイの商売道具」 「って、あんたまさか異教徒?」 ルイズは驚いた声を上げた。 「異教徒、言われたら、そうかもしれへんな」 「そうかも、ってあんた、それとんでもないことよ! ばれたら異端審問にかけられるわよ!」 「何それ?」 「わかりやすく言えば、死刑」 「おーこわ」 と対して怖そうではないウルフウッドの態度にルイズはイライラを募らせた。 「あんたね! 本当にそういうのは危険なのよ! 異教徒というだけで焼き討ちされた村もあったりするし」 「大丈夫。ワイ、別に神様信じているわけちゃうから」 「……信じらんない」 自称牧師から飛び出したとんでもない発言にルイズはあきれ返った。 ウルフウッドはそんなルイズを見て、少し頬を緩める。 そんなウルフウッドの態度が気に食わないルイズはそのまま彼に話しかけることなく、歩く速度を速めた。 * 空には二つの月が浮かんでいる。赤い月と青い月。 それを見上げながら、ウルフウッドはここは別の世界というよりもまた別の星なのかもしれないと思っていた。 あれからルイズに連れられるままに、ウルフウッドはルイズの部屋へとやって来ていた。 「あんたどっから来たの? 牧師ってことはロマリアから?」 「ちゃう。その、なんつーか、もっともっと遠いところや」 ベッドに座ったルイズからの質問に、ウルフウッドは興味なさげに答えた。 「あのねえ。あんた平民でしょ? 平民が貴族にそんな口の聞き方していいと思っているわけ?」 「あぁ、それちょうど聞きたかったんや。その平民ってなんやねん」 ルイズは額を押さえて大きくため息を付いた。 「こんなことも知らない田舎者が私の使い魔なんて」 「ええから、説明してや」 「あんた魔法使えないでしょ」 「使えへんな」 「なら、それが平民。魔法が使えるメイジが貴族。わかった?」 ふーん、とウルフウッドは鼻を鳴らす。まぁ、なんとなく納得は出来る話だった。 そして、そこでふとした疑問が湧いてきた。 「それやったら、おじょうちゃんは魔法が使えへんのになんで貴族なん?」 そう言うとルイズの蹴りが飛んできた。 「なんも蹴らんでもええやん」 「あんたがしょうもないこと言うからでしょ! あんたが悪いのよ、あんたが」 「はいはい」 ルイズはきーっと歯を食いしばる。この男の堂々超然とした態度が気に食わないのだ。 「あんたね、使い魔なんだから、もっと使い魔らしくしなさい」 「それも聞きたかったんやけど、使い魔ってなにするもんなんや?」 「使い魔っていうのはねえ、まず、使い魔は主人の目となり、耳となる能力を与えられるわ」 「ちゅうと?」 「使い魔が見たものは、主人も見ることができるのよ」 「ふーん」 「でも、あんたじゃ無理みたいね。わたし、何にも見えないもん!」 「そら、ワイの視界が見えていたらパンツ隠すやろ」 「なっ!」 そして二発目の蹴りが飛んできた。 「それから、使い魔は主人の望むものを見つけてくるのよ。例えば秘薬とかね」 「秘薬?」 「特定の魔法を使うときに使用する触媒よ。硫黄とか、コケとか……」 「へー、そんなん使うんや」 「あんた、そんなの見つけてこれないでしょ! 秘薬の存在すら知らないのに!」 「無理やな」 ルイズは苛立たしそうに言葉を続けた。 「そして、これが一番なんだけど……、便い魔は、主人を守る存在であるのよ! その能力で、主人を敵から守るのが一番の役目! でも、あんたじゃねぇ……」 ウルフウッドは何も答えずにただ笑っている。 「何よ?」 「まぁ、少なくともガキ一人くらいやったら守ったるわ。安心したらええで」 「ご主人様に向かってガキって!」 「ガキはガキや。昼間かてガキみたいなケンカしとったやろ」 心当たりのあるルイズは言い返せない。 「もう、疲れたから今日は寝る!」 「おやすみ、ってなにやっとんねん!」 ここでウルフウッドが初めて驚いた声を出した。ルイズが脱いだ下着を彼に投げつけたからである。 「何って、着替えてるのよ。あと、それ洗濯しといてね」 「男の目の前でか? それに、言っとくけどワイそういうサービスはあんまり」 「別に使い魔に見られたってなんとも思わないわ」 「まぁ、ワイもなんとも思わへんけどな」 「どういう意味よ?」 「そのままの意味や」 「言っとくけど、あんた床で寝るんだからね」 そう言い放つとルイズは毛布を一つ投げた。 「おう、おおきに」 ウルフウッドは毛布を受け取ると、そのまま床に横たわった。 てっきり文句か何かを言うと思っていたルイズは拍子抜けして、その勢いのままふて寝した。 今まで平気で野宿をしてきたウルフウッドにとって雨風がしのげて凍える心配もない寝床は、それだけで十分満足できるものだったのである。 こうして二人が始めてであった夜は更けていった。 前ページ次ページ虚無と狼の牙
https://w.atwiki.jp/fullgenre/pages/280.html
[名前]ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール [出展]ゼロの使い魔 [声優]釘宮理恵(参加者内ではシャナが同じ声優) [性別]女 [年齢]16 [一人称]わたし [二人称]呼び捨て、あんた トリステイン魔法学院の女子寮に住む2年生。ヴァリエール公爵家の三女である。 両親、2人の姉ともに優れた魔法使いでありながら、物語序盤ではルイズ自身はまったく魔法が使えないという特徴を持っていた。 物語が進み、彼女自身が持つ魔法の系統が明らかになると使えるようになる。 最初は自分が召喚した平賀才人を平民だからと犬扱いしていたが、何度も助けられたりしているうちに1人前の人間扱いしていくと共に彼に惹かれていく。 [能力] 魔法。ただし序盤はどんな魔法を使っても必ず失敗してしまう。失敗とは、魔法が爆発すること。 [性格] 良くいえば誇り高く、悪くいえば負けず嫌いの意地っ張り。 原作序盤では魔法が使えないことをコンプレックスとしており、その反動からか勉学に励む努力家である。 典型的なツンデレであり、ツンデレの代表格でもある。 以下、多ジャンルバトルロワイアルにおけるネタバレを含む + 開示する ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールの本ロワにおける動向 初登場話 008 私がトーキョーに送ってあげる 登場話数 1 スタンス 対主催 死亡話 008 私がトーキョーに送ってあげる キャラとの関係 キャラ名 状態 呼び方 二人称 関係・認識 初遭遇話 平賀才人 仲間 サイト アンタ 使い魔 未遭遇 タバサ 中立or仲間 タバサ アンタ 級友 未遭遇 後藤 敵対 アンタ 殺害される 008 私がトーキョーに送ってあげる 踏破地域 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 A ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ B ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ C ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ D ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ E ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ F ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ □ G ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ H ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ I ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ J ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ F-10地図にない民家の前
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/6147.html
前ページ次ページ日本一の使い魔 「ええ、何ででしょか?自分でも解らないのですが、そうしなくてはって使命感がありました。」 と紙芝居屋のイチーロ・ミーズキ氏は語る。 「彼は何か私に閃きをくれました。彼をもっと知りたいと思います。ゼェェェェット!」 突如現れたヒーローに街が賑わっている頃、二人は買い物をしている。 「ねぇ、ケンは変身しないと戦えないの?普段のケンでも十分のような気もするんだけど」 「俺は、飛鳥と一緒に戦っているんだ。飛鳥の意思、俺の意思、二つの意思で戦うんだ。」 本来、早川は生身で銃弾を鞭で叩き落としたりしているのだが、普段だって飛んでくる矢を箸で つかんだり出来る位のハイスペックである。 早川は少し考えた後、 「ヒーローというものは格好がいいことが第一条件なんです。ヒーローは傷ついていた方が かっこいいからな。」 と言うがルイズは 「傷ついてないし!しかも、ヒーロー物と言えばこの人って言われる俳優のようなセリフは! 相手ボコボコだし!ズバッカー登場だけだし!むしろ突っ込みどころ多すぎて 何から突っ込んでいいか解らない位だし!ゼエゼエ……」 と誰しもが思う所を、とうとう言ってしまう。しかし早川は、 「次はどこに行くんだい?ご婦人の買い物は長くて困るよ」 と華麗にスルーを決め込む。 ルイズ達が次の買い物をしようと移動していると、さっきの騒ぎを見ていた子供達だろう、 停まっている馬車の上から飛び降り 「ずばっと!あたーーーーーっく!」 と真似をしている。バランスを崩し転落しようとする子供を早川はサッっと抱きかかえ、こう諭す。 「ズバットは変身しているから無事なんだぞ、だから危ないから真似しちゃダメだ。」 何かを考えるルイズ、そして思いつく。 「変身、変身……そうだ!ケン。あんたに武器を買ってあげるわ!そうと決まれば行くわよ!」 なぜそうなるのかは解らないが武器を買いに行く事になる。 肩をすくめる早川。 「だってあんたは、変身前の武器持って無いでしょ?あんたの変身するまでの流れ疲れるのよ。 そりゃー読者の皆様は喜ぶかもしれないけど、話考える内の8割が登場シーンのアイデアってどう言う事よ! って私、後半何言ってるんだろ?忘れて頂戴。とにかく武器を買いに行くの!ほら行くわよ!」 一方その頃、早川達を追ってきたキュルケ、タバサの二人はというと。 「ケン達こっちに来ているのは間違い無さそうね」 街の人間達が、赤い服の男が札付きのワルを退治したとの話が耳に入る。 子供達がズバットについて話をしているので、二人の特徴を伝え行き先を聞いてみる。 「ねぇ僕たち、ここを桃髪のツルペタお姉さんと、こんな格好のお兄さん見なかった?」 「ああ、武器を買いに行くって行ってたよ」 「そう、ありがと。じゃあね。タバサ行きましょ」 武器屋に到着したルイズと早川はというと 「ねえケン。あんた、どんなのだったら使える?」 早川に対し質問するが、愚問である。なぜなら何でも使えるからである。 「どんなのって言ってもねぇ」 おおもむろに剣を取り華麗な演舞を舞う。おもむろに槍をとると華麗に使いこなす。 早川は武器を握ると体が軽くなる事を感じる。本来は武器の使い方も解るはずなのだが、 元々何でも完璧にこなすので体の変調しか気が付かない。 「(武器を握ると体が軽くなる、力も強くなってるな)」 「何でもござれで」 唖然とする二人。すると店の片隅から声がする 「おうおう、武器ってのは踊りに使うもんじゃねーぞ」 「喋ってたのはあんたかい?」 早川は乱雑に積み上げられた剣の方へ歩み、その中から一振りの薄手の長剣を取り出す。 刀身の表面には錆びが浮き、お世辞にも見栄えが良いとはいい難い。 「おうよ……っておでれーた。おめえ『使い手』か」 「それって、インテリジェンスソード?」 「そうでさ、若奥様。意志を持つ魔剣、インテリジェンスソードでさ。 いったい何処の魔術師が始めたんでしょうかねえ、剣を喋らせるなんて趣味の悪い」 感心する早川。 「俺作られてから長い事経つが、また『使い手』の手に握られるなんて思わなかったぜ」 「その『使い手』ってのはなんだい?」 「まぁ、あれだアレ!あれだよ……って忘れちまった。まぁいい。俺を買え。そのうち思い出すだろ」 「たしかに、お前さんを握ってると力が沸くっていうのかな。ルイズこの剣にするよ」 あきらかに不満そうなルイズ。 「そんなボロっちいののどこがいいのよ?」 「やい、貴族の娘っ子。俺っちは魔剣デルフリンガー様よ。ボロっちいとは何だ。」 「はいはい、ケンが言うから仕方なく買うけど」 早川はデルフリンガーに向かい 「俺は早川健。よろしくな」 「おうよ。相棒」 二人とは入れ違いに武器屋に入ってくるキュルケとタバサ。ここにルイズとケンが来ていないかと 尋ねると、投売りの剣を一振り買ったという。 「ふーん。ヴァリエール家はセコイわね。私はもっといい物を……」 「もし、若奥様。もしかして、あのお付きの方に贈るつもりで?」 「そうよ。それがどうしたの?」 「これなんかいかがです?」 店主が薦める剣は見事で、一・五メイル位の大剣だった。柄は長く両手で扱う剣であろう、 立派な拵えで、装飾も見事だった。所々に宝石が散りばめられ、刀身が光っている。 更に店主は 「何せこいつを鍛えたのは、かの高名なゲルマニアの魔術師シュペー卿で、魔法がかかってるから 鉄だって一刀両断でさ。ほら、ここにシュペー卿その名が。こいつはいい品ですぜ」 剣の見た目、しかもその剣がゲルマニア産と言う事で買う事にした。 「まぁ、あの旦那でしたらその剣も難なく扱えるでしょうがね。毎度あり」 「ダーリンは何でもニホンで一番らしいわ」 「へぇー。ニホンってのは良く解りませんが、ウチの商品を全部器用に扱ってましたからね」 今まで黙っていたタバサだが 「そんな人が投売りの剣を買った。気になる……」 「ただヴァリエールがケチなだけよ。さぁこれでダーリンは私にメロメロよ」 前ページ次ページ日本一の使い魔
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/2632.html
前ページ次ページゼロ・HiME トリスティンの城下町についたルイズと静留は、目的地の服屋に向かっていた。 「そういえば馬に乗るのは始めてとか言ってたけど、ちゃんと乗りこなしてたわね」 「そうどすか? 自分ではよう分かりまへんけど」 納得いかない様子のルイズに、静留が首をかしげながら答える。そして数歩進んだところで横にある路地に向かって声をかけた。 「誰や知らんけど、そんなとこに隠れんと堂々と出てきなはれ。さっきから尾けてきとるのバレバレどすえ」 「えっ?」 ルイズが静留の声に驚いて路地の方を見ると、そこからキュルケとタバサが現れる。 「な~んだ、ばれてたのね。驚かそうと思ったのに残念」 「だから……成功しないと……」 あっけらかんとした感じのキュルケの隣でタバサが不満そうに呟く。 「で、人をこそこそ尾け回して、何の御用かしら?」 「別に用事なんかないわよ。私達はあなた達を偶然見かけて、面白そうだから後を尾けてただけだもの」 「あっそ、用事ないならさっさとどっか行きなさいよ」 ルイズはそう言ってキュルケを追い払おうとするが、キュルケはそれをまるきり無視して話を続ける。 「そういえば、この先って服屋があるけど、今日はシズルの服を買いに来たの?」 「そうよ、いつまでも自分の使い魔にメイドから借りた服を着せておくわけにはいかないもの」 「ふ~ん……そうだ、私達と一緒に買い物しない?」 「はぁ!? なんでそうなんのよ?」 ルイズは唐突なキュルケの提案に声を荒げるが、それをなだめるように静留が口を開く。 「別にええんやないどすか? せっかく出会ったんやし、皆で買い物したほうが楽しいと思いますえ」 「結局、それってシズルの希望じゃないの……まあ、今日はあなたの買い物だし、好きにするといいわ」 「ルイズ様、おおきに。ほな、いきまひょか」 渋々ながら同行を認めたルイズを先頭に、静留たちは連れ立って服屋へと向かった。 その後の服屋での買い物は大騒ぎだった。 ルイズとキュルケがとっかえひっかえ服を持って来ては、その度にあーでもないこーでもないといって言い争い、それを静留とタバサがなだめるということが繰り返されたからだ。 結局、タバサの「実用的じゃない」という突っ込みでルイズとキュルケが選んだのが却下され、静留はタバサの選んだ丈夫なチュニックとズボンという実用重視の組み合わせを数着購入した。もっともルイズとキュルケは不満そうにしていたのだが。 その後、小物や靴などを見て回ったルイズ達が、昼食のために小奇麗な食事処に入った頃にはすでに正午をだいぶ過ぎていた。 「ルイズ様、予備の武器を買いに行きたいんやけど」 食事がひと段落して、皆でこれからどうしよかと相談していると、静留がそんなことを言い出した。 「予備の武器って……エレメントがあるのに他にも武器が必要なの?」 「実は高次物質化能力が不安定で、いつでも殉逢を出せるいうようにはいかんようなんどす。現に今日はいくら精神を集中しても出えしまへん」 ルイズの疑問に静留がすまなそうに答える。 「へえ、あの武器ってエレメントっていうのね。で、高次物質化能力って何?」 「あっ……」 横から口を挟んできたキュルケの言葉に、ルイズがしまったという表情で口を手で押さえる。そのルイズの様子に静留は苦笑すると、キュルケにもタバサの時と同じように生まれつきの能力だという説明をした。 「ふ~ん、そういうことだったのね」 「キュルケ、くれぐれもこのことは……」 「はいはい、誰にも言わないから安心しなさい。いくらなんでも級友の使い魔を売るようなまねなんかしないわよ――タバサ?」 キュルケが心配そうな顔をしているルイズに向かって面倒くさそうに答えていると、隣に座っていたタバサが席から立ち上がって口を開く。 「武器屋に行くなら急がないと……夕食までに帰れないかも知れない」 「そうどすな。ほな、いきまひょか?」 静留がタバサの言葉に同意して皆を促し、ルイズ達は食事処を出て、路地裏にある武器屋へと向かった。 「こいつはおったまげた! 貴族が剣を! おったまげた!」 武器屋に入ると、店主は最初はルイズ達を王宮から手入れにきた役人かと怪しんでいたが、客だというと今度は大げさに驚いてみせた。 「ねえ、貴族が客だからってちょっと大げさすぎない?」 「いえ、お嬢様方。農民は鍬を振って、兵隊は剣を振って、貴族は杖を振る、と相場は決まっておりますんで」 「使うのは私じゃないわ。使い魔よ」 「忘れておりました。昨今の使い魔は剣も振るうようで……剣をお使いになるのは、そちらの方で?」 店主は揉み手をしながら静留をジロジロ見回すと、ルイズに尋ねる。 「ええ、そうよ。私は剣の事は分からないから彼女に合いそうなのを適当に見繕って頂戴。そうね、できれば槍の方がいいけど」 「あいにくとそのお嬢さんが持てそうな槍は扱ってませんな。剣ならこの長剣とか丁度良いかと」 店主はそう言うと、装飾された煌びやかな長さ1メイル半ほどの長剣を出して見せる。 「最近、城下の貴族のお屋敷を土くれのフーケとかいう、メイジの盗賊が荒らしてるせいか、貴族の方々の間で手だれの下僕を警護につけて剣を持たせるのが流行っておりましてね。その際にお選びになるのが、こういう業物の長剣でさあ」 「へえ、このごろ随分と物騒なのね」 適当に相づちを打つルイズの横で、剣を見ていた静留が店主に話しかける。 「ご店主さん、確かに見事な剣のようやけど……こら数合打ちおうただけでポッキリいってしまいそうやねえ」 「冗談言っちゃいけませんぜ。こいつを鍛えたのはかの高名なゲルマニアの錬金魔術師シュペー卿で、魔法が掛かってるから鉄だって一刀両断でさ。この通り紋章と銘が刻まれておりやすでしょう」 静留の言葉に店主は血相を変えて食って掛かったのだが―― 「残念……これは精巧な模造品……」 「そうね、シュペー卿のは実家にあるけど、紋章が違うわ。ご店主、偽物をつかまされたんですのね、お可哀想に」 「そ、そんな……」 タバサの冷静な、キュルケの哀れむようなダメ押しを受けて、がっくりと店の床にへたり込んだ。 「へっ、ざまあみろってんだ! この俺様の価値も分からねえでガラクタの中に突っ込むようなやつにゃ、いい薬だぜ」 「……誰やの?」 突然、聞こえてきた店主を嘲るカチャカチャという金属音混じりの低い男の声の主を探して、静留はさっと店内を見回した。 「ここだぜ、貴族の娘っ子ども」 再び聞こえてきた声の主は、店の隅に放置されているガラクタの間に突き立てられ、柄にある金具をカタカタとさせている錆びが浮いた片刃の剣だった。 「へえ、喋る剣どすか」 「おうよ。なんだ娘っ子、インテリジェンスソードも知らねえのか? 一体、どこの田舎もんだよ」 静留が物珍しそうに剣と会話していると、店主がつかつかとやってきて剣に向かって怒鳴り声を上げた。 「やい、デル公! てめえ、俺をコケにした上に、お客様に失礼なこと言いやがって! 今日と言う今日はもう勘弁ならねえ! 貴族に頼んで溶かしてやらあ!」 「やれるもんなら、やってみろ! どうせ、こちとらこの世に飽き飽きしてたところさ! 溶かしてくれるんなら、上等だ!」 「おう、やってやらあ」 そう言って剣を取ろうとする店主を、静留が押しとどめる。 「まあ、ご店主さんもそう怒らんと。剣とはいえ、自我があるんやし、粗末に扱われれば嫌味のひとつもいいたなると思いますえ」 「おっ、なかなか話が分かるじゃねえか、娘っ子。俺の名はデルフリンガー、おめえの名は?」 「うちの名は藤乃静留や。よろしゅうにな、デルフリンガーはん」 静留に挨拶を返されたデルフリンガーと名乗った剣は一瞬、黙り込んだ後、静留に向かって口を開いた。 「おどれーた! 娘っ子、てめ、『使い手』かよ! へっ、しかも場数を踏んでるときてやがる! 娘っ子……いや、姐さん、俺を買いな」 「別に買うてもかまへんよ」 静留がくすりと笑ってデルフの売り込みに同意すると、ルイズが嫌そうな声を上げる。 「えー、そんなの買うの? 何か錆びてるんだけど」 「まあ、磨けば錆は落ちるやろし、いざいう時にはいい知恵を貸してくれると思いますえ。それに見栄えが立派なナマクラを掴まされるよかはええんやないかと」 「そうねえ、少なくともさっきのよかましね」 「王宮に通報……」 静留、キュルケ、タバサが冷ややかな視線で見つめると、店主は引きつった愛想笑いを浮かべてルイズに声をかけた。 「お嬢様、お代は結構なんで、どうぞお持ち帰りください。こうやって鞘に入れときゃ、おとなしくなりますんで」 店主はデルフリンガーを鞘に収め、背負うためのベルトと一緒に静留に手渡した。 「それじゃあ、お先にね。ルイズ、シズル」 「お先に……」 武器屋を出て街の入り口につくと、キュルケとタバサはシルフィードに乗って一足先に学院へと帰っていった。 「まったく何しに来たのかしら、あの二人」 「でも、楽しかったんとちゃいますか?」 馬上から飛び去るシルフィードの影を見送りながらぼやくルイズに、静留がにこにこと微笑みながら尋ねる。 「まあ、確かに退屈はしなかったけど……べ、別に楽しくなんか――って、なにニヤニヤしてんのよ!」 「別になんにも……ただ、ほんにルイズ様はかいらしいなと思うて」 「かっ……な、何恥ずかしいこと言ってんのよ! と、とにかく帰るわよ!」 「はいな」 自分の言葉に顔を真っ赤にするルイズの様子に静留は目を細めると、共にくつわを並べて学院への帰路に着いた。 前ページ次ページゼロ・HiME